埼玉県は全国有数のうどん消費量を誇り、特に川越周辺は地粉を用いた褐色で力強い噛みごたえの「武蔵野うどん」が広く親しまれてきた地域です。そうした土壌において、澄んだ黄金出汁と滑らかな弾力を持つ手打うどん長谷沼の讃岐うどんがなぜここまで熱狂的に受け入れられているのか、そこには明確な理由が存在します。
店主は、本場香川県高松市の名店「本格手打もり家」などで研鑽を積んだ生粋の讃岐職人です。武蔵野うどんの「がっしりとした硬さ」とは一線を画し、長谷沼の麺は「しなやかな伸び」「みずみずしい喉越し」「噛み締めた瞬間に押し返す強靭な弾力」を完璧なバランスで両立させています。小麦粉の配合、水加減、足踏みと熟成の温度管理に至るまで、讃岐の伝統製法を川越の気候に合わせて緻密に調整している点が特徴です。
さらに、味の根幹を支える出汁には、香川県伊吹島産の厳選された白口煮干し(いりこ)を贅沢に使用。そこに利尻昆布の上品な旨味と厳選した節類のコクを重ね、えぐみを一切出さずに力強い風味だけを抽出しています。武蔵野の濃口醤油文化に慣れ親しんだ地元住民に「出汁の深さで唸らせる本物の味」を提示したことが、同店が瞬く間に食べログ百名店の常連へと駆け上がった最大の原動力といえます。