「オスの三毛猫を見つければ数千万円で売れる」という言説は、昭和から平成、そして現在に至るまで語り継がれる有名な都市伝説の一つです。この噂の起源を辿ると、いくつかの歴史的事実とメディアの過熱報道が結びついて生まれたものであることが分かります。
代表的な歴史的エピソードとして知られるのが、1956年に出発した第1次南極地域観測隊に同行したオスの三毛猫「タケシ」の存在です。当時、オスの三毛猫は「遭難しない」「航海の安全を守る」という強力な縁起物・守り神として船乗りの間で重宝されていました。タケシは南極の過酷な越冬生活を無事に生き抜き、日本中にオスの三毛猫ブームを巻き起こしました。
昭和40〜50年代には、希少動物コレクターや一部の富裕層の間で「オスの三毛猫に懸賞金数千万円を支払う」という情報が週刊誌やテレビ番組でセンセーショナルに取り上げられた記録が残っています。しかし、ペット業界の取引データや動物愛護管理法が厳格化した現在において、公のペットオークションや生体販売で数千万円の値段がつくことはまずありません。
専門ブリーダーや獣医学関係者の証言によると、仮にオスの三毛猫が誕生した場合でも、譲渡会や正規ブリーダーから一般的な価格(または医療費負担のみの譲渡)で引き渡されるケースが一般的です。「億単位の資産価値がある」と期待して捕獲や密売を目論む行為は、倫理的にも法的にも完全に否定されるべき誤解と言えます。