83日間にわたる凄惨な闘病生活と、苦悩する医療陣の葛藤は、メディアを通じて社会に大きな衝撃を与えた。なかでもNHKが制作し大きな話題を呼んだNHKスペシャル『83日間の闘い〜臨界事故・被曝治療の記録〜』は、医療の最前線で何が起きていたのかを余すところなく伝えた歴史的発掘ドキュメンタリーである。
カメラが捉えたのは、医療用モニターの数値、変わり果てていく患者の身体、そして「自分たちの行っている治療は本人のためになっているのか」と自問自答を繰り返す医師たちの表情だった。過飾を排した冷静な描写が、かえって事態の異常さを際立たせる。事故の風化にあらがう報道ジャーナリズムの真骨頂であり、映像や写真は不可逆的なテクノロジーの暴走が人間に何をもたらすかを社会の記憶に深く刻みつけた。