金沢都市圏の商業史を語る上で避けて通れないのが、かつて野々市市御経塚に君臨した「イオン御経塚店」の閉店劇と、その後のドラマです。
1998年に「御経塚サティ」として開業した同店は、金沢南部および野々市住民にとって週末の定番スポットであり、併設された「イオンシネマ御経塚」とともに四半世紀にわたり愛され続けました。しかし、2021年5月31日、多くの市民に惜しまれながらその歴史に幕を下ろしました。
ネット上では「売上不振だったのか」と勘繰る声もありましたが、金沢イオン御経塚の閉店理由は完全なる戦略的スクラップ&ビルドです。わずか3キロメートル西の白山IC前に、延床面積約3倍の「イオンモール白山」を開業させることが決定していたため、自社競合(カニバリゼーション)を回避し、最新鋭の巨艦店へ経営資源と集客力を一本化する経営判断が下されたのが真相でした。
当時の報道や閉店セレモニーでの店長挨拶では「23年間の感謝と、白山へのバトンタッチ」が涙ながらに語られ、地元SNSでは「青春の思い出が消えた」「サティ時代からのシンボルが失われて寂しい」といった声が溢れ返りました。
では、イオン御経塚跡地は現在どうなっているのか。広大な跡地は放置されることなく、2023年夏に大型複合商業施設「アークスクエア御経塚」として鮮やかに生まれ変わりました。敷地内には、大型ホームセンター「スーパーセンタームサシ」、北陸最大級の売場面積を誇る「ヤマダデンキ Tecc LIFE SELECT」、そして食のインフラとしてイオングループの「イオンフードスタイル御経塚店」が出店。単なるショッピングモールではなく、生活インフラを網羅したロードサイドの要衝として、現在も力強く息づいています。