吉高由里子がなぜ、10代の若さで自身の身体を晒す危険を冒してまで本作に挑んだのか。その根底には、映画クランクイン直前に発生した凄惨な交通事故が存在します。
オーディション合格後、撮影開始を目前に控えたある日、吉高は乗車していた車ごとトラックと衝突する大事故に遭遇しました。顎の骨を粉砕骨折し、集中治療室(ICU)に5日間収容されるという、文字通りの生死の淵を彷徨う重傷でした。一時は顔面の変形や後遺症により女優復帰は絶望的と見られ、映画の制作中止すら検討される事態に陥ったのです。
しかし、蜷川監督は代役を立てることを拒否し、彼女の回復を待ち続けました。数ヶ月に及ぶ過酷なリハビリを経て撮影現場に戻った吉高の背中や顎には、生々しい事故の傷跡が残っていました。映画本編を精査すると、ルイの背中に刻まれた傷跡が隠されることなく画面に映し出されている場面が確認できます。
当時の特番インタビューや手記において、吉高は「一度死にかけたことで、世間体や他人の目を気にする自分が綺麗さっぱり消えた。『失うものなんて最初から何もない』という強烈な居直りが生まれた」という趣旨の告白を残しています。交通事故という生の危機が、彼女から中途半端な羞恥心を剥ぎ取り、「肉体という依り代を使って役を生き抜く」という純粋な覚悟へと変貌させたのです。