ロックという文化がいかにして形作られてきたのか、その文脈を知ることは定義を理解する上で欠かせません。ロックンロールの歴史と起源は、1950年代半ばのアメリカ合衆国南部に遡ります。
当時、厳格な人種隔離政策が敷かれていたアメリカで、アフリカ系アメリカ人の「リズム&ブルース(R&B)」と、白人労働者層の「カントリー&ウェスタン」が奇跡的な交差を果たしました。チャック・ベリーの鋭利なギターリフ、リトル・リチャードの咆哮、そしてエルヴィス・プレスリーの腰を揺らす過激なパフォーマンスが若者たちを熱狂させ、人種の壁を超越した新しいユースカルチャーが誕生しました。
1960年代に入ると、英国からザ・ビートルズやザ・ローリング・ストーンズが登場し、「ブリティッシュ・インヴェイジョン」と呼ばれる世界的な社会現象を巻き起こします。ビートルズは単なるアイドルから自作自演のアーティストへと進化を遂げ、アルバム『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』(1967年)によってロックを「大衆消費財」から「総合芸術」へと昇華させました。
一方、日本のロック史と経緯もまた、激しい議論とアイデンティティの模索の連続でした。
- 1960年代後半(グループサウンズからニューロックへ):GSブームを経て、模倣からオリジナリティへの脱皮が図られる。
- 1970年代初頭(日本語ロック論争):「英語でなければロックのリズムに乗らない」と主張する内田裕也らに対し、細野晴臣・大滝詠一・松本隆・鈴木茂による「はっぴいえんど」が美しい日本語詞を用いたロックを完成させ、論争に終止符を打つ。
- 1970年代後半〜80年代(パンク・ニューウェイブとバンドブーム):キャロルやRCサクセション、BOØWYの登場により、ロックが巨大な商業的メインストリームへと成長。
- 1990年代〜2010年代(オルタナティブ・フェス文化):ヴィジュアル系や下北沢系インディーズ、大型野外フェスの定着により、細分化と大衆化が同時に進行。
日本のロックは、西洋のビート感と日本語の情緒的な音韻構造をいかに調和させるかという格闘の歴史そのものでした。