呉阪急ホテル営業終了の一報が公表された際、地域経済界や住民に走った衝撃は計り知れないものがありました。親会社である阪急阪神ホテルズの公式発表資料や関連各社の事業再構築計画を読み解くと、この決断が突発的な経営悪化ではなく、極めて合理的かつ構造的な経営判断の帰結であったことが分かります。
最大の呉阪急ホテル閉館理由は、「ホテル事業における資産ポートフォリオの抜本的見直し」と「巨額の設備更新コスト」の二重苦にあります。阪急阪神ホテルズは、コロナ禍以降の需要構造変化を見据え、首都圏や関西圏などのインバウンド旺盛な大都市圏において「宿泊特化・ライフスタイル型(ホテル阪急レスパイアやレムなど)」へ投資を集中させる戦略へと舵を切りました。その過程で、地方都市に位置するフルサービス型(宴会場や婚礼施設、直営レストランを多数抱える大型ホテル)の直営継続は、投資対効果の面で極めて厳しいスクリーニングを受けることになったのです。
さらに、1992年の開業から30年以上が経過し、空調や配管、耐震・省エネ基準への適合など数億円から十数億円規模にのぼる大規模改修費用の捻出が現実的な経営課題として浮上していました。呉市内の宴会・婚礼需要は少子高齢化や企業交際費の縮小によりピーク時から段階的に縮小しており、投じた資本を回収するだけの長期的な収益見通しが立たなくなったことが、撤退を不可逆なものとしました。