種無しぶどうの作り方は、品種ごとに要求されるホルモン濃度や処理回数、タイミングが大きく異なります。ジベレリン処理の時期とタイミングを一日でも誤ると、種が残ったり、実が肥大しなかったりするシビアな世界です。
ここでは、日本の果樹園で主流となっている3大品種(デラウェア、巨峰、シャインマスカット)の標準的な処理プロセスを整理します。
1. デラウェアの種抜き方法
小粒ぶどうの定番であるデラウェアは、ジベレリンに対する感受性が非常に高く、日本の種無し技術の原点となった品種です。通常、合計2回の浸漬処理を行います。
- 1回目(無核化処理):満開予定日の約10日〜14日前(蕾がほぐれ、開花直前)。ジベレリン100ppmの薬液に花穂を丸ごと浸します。この処理で種子の形成を阻止します。
- 2回目(肥大促進処理):満開後7日〜10日後。果粒が小豆大になった頃、再び100ppmの液に浸漬し、果実の肥大を促します。
2. 巨峰の無核化処理
大粒の黒ぶどうである巨峰は、かつて種無し化が非常に困難とされていましたが、処理技術の確立により安定した無核化が可能になりました。巨峰の無核化処理も基本は2回処理です。
- 1回目:満開期〜満開後3日以内。ジベレリン25ppm液を使用。巨峰は早すぎる時期に処理すると花ぶるい(花が落ちて実がつかない現象)を起こしやすいため、しっかり開花を確認してから処理します。
- 2回目:満開後10日〜15日後。ジベレリン25ppm液で果粒の肥大を促進させます。
3. シャインマスカットのジベレリン処理とフルメット液剤の併用
高級ぶどうとして絶大な人気を誇るシャインマスカットのジベレリン処理では、果粒を大粒に仕上げるためにフルメット液剤の併用が業界標準となっています。フルメット(有効成分:ホルクロルフェニュロン)はサイトカイニン系の植物成長調整剤で、細胞分裂を劇的に活発化させる作用を持ちます。
- 1回目:満開日〜満開後3日頃。ジベレリン25ppmにフルメット液剤2〜5ppmを加用した混合液に浸漬します。種無し化と初期肥大を同時に誘導します。
- 2回目:満開後10日〜15日後。ジベレリン25ppm(単用、または肥大状況に応じてフルメット微量加用)で仕上げの肥大をかけます。