深夜ドラマとしてスタートした『闇金ウシジマくん』が、コアな青年漫画ファンのみならず幅広い大衆層を惹きつけた背景には、監督・プロデューサーを務めた山口雅俊氏による極めて計算された原作漫画との違いが存在します。
最大の違いは、片瀬那奈演じる大久保千秋の存在です。原作漫画におけるカウカウファイナンスは、丑嶋を筆頭に柄崎、高田、マサル(ドラマではシーズン2より登場)といった男所帯であり、女性社員が事務所に常駐する構造にはなっていません。原作の描写は徹底して冷酷であり、債務者が自業自得の破滅へと堕ちていく様子を一切の感傷を交えずに冷徹にスケッチする点に持ち味がありました。
しかし、民放の地上波連続ドラマとして放送するにあたり、登場人物全員が極悪人や救いようのない破滅者だけで構成されていては、一般視聴者が感情移入する足がかりを失い、単なる悪趣味な見世物に終わりかねません。そこで創出されたのが、元風俗嬢でありながら常識的な倫理観を持ち、「なぜここまで過酷に取り立てるのか」「彼らにも生活があるのではないか」と丑嶋に疑問をぶつける大久保千秋というフィルターでした。
千秋が丑嶋の回収現場に同行し、債務者の嘘や堕落を目の当たりにしながら絶望し、同時に丑嶋の「奪るか奪られるかなら、俺は奪る方を選ぶ」という徹底した合理主義に戦慄する構図。この視点があることによって、視聴者は千秋の目を通して闇社会の深淵を安全圏から覗き見ることが可能となったのです。原作の凄惨なリアリズムを毀損することなく、テレビドラマのエンタメとして昇華させたこの脚色こそ、シリーズ化への道を切り拓いた最大の勝因でした。