この時代の地政学的緊張を語る上で外せないのが、前年に発生した米国大統領ジョン・F・ケネディの暗殺事件である。カリスマ的指導者を失った直後の世界は、いつ核戦争が起きてもおかしくない極限の緊張状態に包まれていた。
その混乱の渦中で開幕した1964年東京オリンピックは、まさに平和の試金石であり、同時に諜報勢力にとって格好の活動舞台となった。ケネディ暗殺後に発足したジョンソン政権は、アジアにおけるアメリカの指導力を示そうと暗躍。東京の街頭や競技場周辺では、外交官の肩書を持つ工作員たちが張り巡らされた情報網の中で火花を散らしていた。