「芋」という名がついているものの、菊芋はジャガイモやサツマイモのようなナス科・ヒルガオ科の植物ではなく、キク科ヒマワリ属に分類されるキクの仲間です。デンプンをほとんど含まないため、ジャガイモのように生食で消化不良を起こす毒性(ソラニンなど)の心配はありません。薄切りにして口に運ぶと、レンコンや梨、あるいはヤーコンを思わせるシャキシャキとした瑞々しい歯ごたえと、ほのかなナッツのような香りと甘みが広がります。
下処理において最も犯しやすい失敗が「皮をきれいに剥いてしまうこと」です。実は、菊芋の皮直下には、ポリフェノール(クロロゲン酸など)やミネラル、そして主役である水溶性食物繊維イヌリンが最も高密度で集中しています。ピーラーで皮を厚く剥いてしまう行為は、健康成分の大部分をごみ箱へ捨てているようなものです。
調理の際は、ゴツゴツとした節の隙間にある泥を、使い古した清潔な歯ブラシや野菜用たわし、丸めたアルミホイルを使って水洗いするだけで十分です。どうしても気になる黒ずみや硬い芽の先端だけを包丁の刃先で軽くこそげ落とせば、皮ごとおいしくいただけます。
また、「しっかりアク抜きをしなければ渋いのでは」と思い込み、切った菊芋をボウルの水に何十分も浸け置きするケースが見られます。これも避けるべき調理法です。菊芋には強いエグみ成分はなく、水にさらす本来の目的はポリフェノールの酸化による変色を防ぐことだけです。イヌリンは極めて水に溶け出しやすいため、水にさらす時間は1分以内にとどめるか、切ってすぐに油や調味料で和えてしまうのが栄養を逃さないコツです。