十七代目中村勘三郎の長女として生まれ、十八代目中村勘三郎の妻として歌舞伎界の最前線を走り抜けた足跡は、まさに日本文化の生きた歴史そのものと言える。だが、表に出てくる煌びやかな話題の影で、彼女がどのような葛藤と決断を重ねてきたのかを知る者は少ない。
「勘三郎さんが平成中村座の立ち上げや海外公演へと突き進んだ際、実質的な現場の舵取りと精神的支柱を担っていたのが彼女でした」。長年舞台に携わってきた松竹関係者は、そう当時を振り返る。日本俳優協会の活動を陰で支えつつ、伝統を守ることと新しい表現に挑むことの狭間で揺れる人間模様を誰よりも近くで見つめてきた彼女の知られざる経歴は、単なる名門の妻という枠組みを遥かに超えている。