かつての錦市場は、SNSの「映え」を狙った過剰な串焼きやスイーツのテイクアウト販売が横行し、地元の買い物客が完全に足を通せなくなる本末転倒の事態に直面していた。転機となったのは、振興組合による通路での歩き食い全面自粛要請と、店舗内イートインスペースの義務化に近いガイドライン改定だ。
現在、老舗鮮魚店の店内には出来立てのハモの天ぷらや京出汁が香る出汁巻き卵をその場で味わえるカウンターが設置されている。店主の山下氏はこう語る。「以前はただゴミを出されて終わりでした。今は、なぜ京都のハモが美味しいのか、伝統の調理法を説明しながら提供できる。客単価は以前の3倍になりましたが、満足度は比較にならないほど高いです」。単なる「通過点」だった市場が、体験価値を提供する「目的地」へと進化を遂げたのだ。