日本赤十字社の献血データや臨床現場の統計によると、採血時に気分不快や失神を起こす「血管迷走神経反応(VVR)」の発生頻度は全体の約1.0〜1.5%前後に上ります。特に若年層や初回到来者において比率が高くなる傾向が報告されています。
医療現場の聞き取りや当事者の手記・体験談からは、単なる身体反応にとどまらない心理的増幅のプロセスが浮き彫りになっています。
「以前、健康診断の採血で倒れかけた記憶がトラウマになり、翌年の採血室に入った瞬間から心臓がバクバクして冷や汗が止まらなくなった。針が刺さった直後にすっと血の気が引き、気付いた時にはベッドに寝かされていた」(30代男性・会社員の手記より)
このように、「倒れたらどうしよう」という強い予期不安そのものが交感神経を極度に緊張させ、痛覚刺激が加わった瞬間に副交感神経の急激な反動(オーバードライブ)を招くという悪循環が存在します。
また、日常生活で極めて多いのが「排便失神」や「排尿失神」です。便秘で強くいきむ際、胸腔内圧が上昇して心臓への血液灌流が一時的に遮断されます(バルサルバ効果)。その後、排便が終わって急にいきみを緩めた瞬間、堰を切ったように血管が拡張し、同時に迷走神経が強く刺激されて血圧が急降下します。夜間のトイレは副交感神経が優位な時間帯でもあり、寝起きで脱水傾向にあることも発症リスクを何倍にも引き上げる要因となっています。