浜松ホトニクス豊岡製作所を語る上で欠かせないのが、同社の基幹部門である浜松ホトニクス 電子管事業部の存在です。広大な敷地内では、光を電気信号へと超高感度に変換・増幅する「光電子増倍管(PMT: Photomultiplier Tube)」を筆頭に、現代の先端科学や医療機器に不可欠な精密電子管製品が生み出されています。
特に世界的な名声を決定づけたのが、東京大学宇宙線研究所の観測装置「カミオカンデ」「スーパーカミオカンデ」に供給された直径20インチ(約50センチメートル)の巨大な光電子増倍管です。2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏の超新星ニュートリノ観測、そして2015年に同賞を受賞した梶田隆章氏のニュートリノ振動発見は、この豊岡製作所で熟練のガラス職人が一本一本手吹き成形し、高度な真空封じ込め技術を施したPMTなくしては成し得ませんでした。その卓越した技術的功績は、2014年10月に電気・電子工学分野の世界的な歴史的偉業を称える「IEEEマイルストーン」にも認定されています。
製品ラインナップは基礎科学分野にとどまりません。がんの早期発見を可能にするPET(陽電子放射断層撮影装置)や血液分析器用の高感度センサ、油田探査用耐熱電子管、さらには電子顕微鏡用検出器に至るまで、豊岡製作所で生み出される電子管製品は医療・産業・学術の最前線へ送り出されています。「光の1個(フォトン)すら逃さない」極限の検出能力は世界市場で約9割のシェアを握り、競合他社が容易に追随できない技術的障壁を築き上げています。