ネット上の言論や歴史フォーラムなどでは、「自治省の設置や総務省への再編は、戦前に治安と地方を牛耳った内務省の復活だったのではないか」という指摘が散見されます。しかし、行政組織の構造的な実態を検証すると、この見解には大きな誤解が含まれています。
第一に、戦前の内務省は官選知事(国が直接任命する都道府県知事)を通じて全国の地方行政を直接指揮命令下に置いていましたが、戦後の自治省は日本国憲法が保障する「地方自治の本旨」に基づき、公選された知事や市町村長を直接指揮する権限はありませんでした。地方自治法上、国と地方は対等・協力の関係が原則とされていたためです。
第二に、警察組織の指揮権に関する誤解です。自治大臣が国家公安委員会委員長を兼任していた時期でも、警察実務を直接動かしていたのは警察庁長官であり、自治省の官僚が警察官を直接指揮していたわけではありません。警察庁と自治省は別組織として厳格に人事と指揮系統が分断されていました。
「内務省復活」という言説は、政治的な象徴としての権力集中を警戒する批判的なレトリックであり、法制度上の統制メカニズムは戦前とは根本的に異なっていたのが歴史的な真実です。