暴走するブラックカレーに対し、味平が導き出した答えは「奇をてらわない、毎日でも食べられる日本人のための大衆カレー」でした。味平は、炒めた玉ねぎの自然な甘みと、隠し味に加えた醤油・味噌・福神漬けの汁などを用い、身体に優しく何度食べても飽きのこない「味平カレー」を完成させます。
勝負の結末は、あまりにも劇的かつ悲哀に満ちたものでした。ブラックカレーの中毒性によって暴徒化した客たちにより、点心閣の店舗はパニック状態に陥ります。さらに、自らの最高傑作であるブラックカレーを連日味見し続けた鼻行者自身もまた、その麻薬性と刺激に脳を冒され、命よりも大切な「料理人としての嗅覚と味覚」を完全に喪失してしまうという致命的な自滅を迎えます。
味も匂いも分からなくなり、錯乱状態でスパイスを鍋に投げ込み続ける鼻行者。駆けつけた警察の捜査と点心閣の崩壊によってカレー戦争は終結しました。味平は勝利を手にしたものの、一人の類まれなる天才料理人が料理の魔道に堕ち、破滅していく姿を目の当たりにして深い苦悩を刻むことになります。「食は人を幸せにするためのものであり、支配するための武器ではない」という、料理漫画における至高のテーマを提示した圧巻のフィナーレでした。