幻の仮面ライダージョーカージョーカーとは?通常版との違いと誕生の真相

幻の仮面ライダージョーカージョーカーとは?通常版との違いと誕生の真相

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物語論および心理学的な観点から『仮面ライダーW』という作品を俯瞰したとき、仮面ライダージョーカーの存在は「健全な個の自立とバウンダリー(心理的境界線)の確立」という極めて深い人間的成熟のプロセスを描き出しています。

物語初期の翔太郎とフィリップは、「2人で1人」という強烈なアイデンティティの共有によって結ばれていました。しかし、これは裏を返せば「相棒がいなければ何もできない」という相互依存の危うさを常に内包していたと言えます。劇場版『MOVIE大戦2010』のジョーカージョーカーは、その共闘関係がディケイドの力で文字通り2つに引き裂かれただけの「外的な分裂」に過ぎませんでした。

しかし、フィリップの消滅という決定的な喪失を経て誕生した仮面ライダージョーカーは違います。翔太郎は相棒の温もりにすがることを禁じられ、孤独のなかで自らの足で立ち、ロストドライバーを装着しました。依存関係を脱却し、ひとりの独立した主体として痛みを引き受ける覚悟を決めたからこそ、彼は真の「大人の男(ハードボイルド)」へと昇華したのです。

私たちがこの漆黒の戦士に惹かれるのは、誰かに依存する弱さを乗り越え、自分の足で人生の困難に立ち向かう人間の尊厳を、翔太郎の背中に見出しているからに他なりません。

中川 明日香
著者

中川 明日香

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。