魚介のプロが集う豊洲市場。競り場と仲卸の売り場で連日飛び交うのは、蟹の鮮度と味を損なわないための知恵だ。職人たちが口を揃えるのは、「硬い包丁で力任せに切ると、殻の破片が身に刺さり、水分や旨味エキスが逃げてしまう」という事実である。
プロのさばき方は拍子抜けするほどシンプルだ。まず腹側の三角の袴(ふんどし)を手で取り外し、甲羅と胴体の間に指を引っ掛けて一気に押し開ける。包丁を入れる必要はどこにもない。関節のスキマにハサミの刃を斜め15度で入れるだけで、殻は驚くほど綺麗に割れ、プリッとした身がそのまま姿を現すのだ。