焼き鳥ファンの間でしばしば巻き起こるのが、「ふりそでは抱き身や手羽元と何が違うのか」という議論です。居酒屋やスーパーの表示によって定義が曖昧に感じられる背景には、食肉の解体工程における歴史的な事情が関係しています。
「手羽元」と「肩肉(ふりそで)」の明確な境界線
手羽元は、鶏の翼の根元にある「骨付き」の部位全体を指します。一方、ふりそでは手羽元の関節から胴体(胸骨・鎖骨まわり)の間に位置する肉のみをナイフで丁寧に削ぎ落とした純粋な赤身肉です。手羽元は骨から染み出す髄液やコラーゲン質の濃厚さが前面に出ますが、ふりそでは筋肉繊維そのもののシルキーな舌触りと皮の香ばしさをダイレクトに味わう点に構造上の違いがあります。
「抱き身(だきみ)」との混同が生まれる理由
最も誤認されやすいのが「抱き身」との違いです。多くの名店において、抱き身とは「鶏ムネ肉を良質な鶏皮で巻き込むように包んだ串」、あるいは「ムネ肉の皮付き最上部位」を指します。肉自体はムネ肉であり、職人が皮の脂をムネ肉の繊維に浸透させる技術を味わう串です。
それに対してふりそでは、皮と肉が本来一体となっている独立した筋肉部位です。一部の店舗で肩肉のことを「抱き身」と呼んで提供していた名残りから混同が生じていますが、素材本来の肉質としては明確に別物です。