なぜ警察庁は、新基準原付の策定に際して「30km/h制限」と「二段階右折」のセットを崩さなかったのでしょうか。交通史を遡ると、日本の道路行政が抱え続けてきた「原付という存在の歪み」に行き着きます。
昭和30年代、大衆の移動手段として原付免許は筆記試験のみで即日交付される手軽な制度として普及しました。この「手軽さ」の代償として課されたのが、極端な速度制限と特殊な走行ルールです。もし二段階右折を廃止して小回り右折を全面的に認めるならば、最高速度の引き上げ(最低でも50km/h程度)が不可避となります。しかし速度上限を引き上げれば、ヘルメットの安全規格見直し、制動性能基準の厳格化、そして何より「普通二輪免許並みの実技試験の義務付け」が必要になります。
そうなれば、地方で移動手段を持たない高齢者や、原付通学・通勤を行う若年層の足を奪うことになりかねません。警察庁と関係省庁は、国民生活の利便性と死傷事故率の抑制を秤にかけた結果、「利便性の不満には目をつぶり、安全制限の枠組みを丸ごと残す」という政治的・実務的判断を下したのです。
【プロの結論】新基準原付の購入で後悔しないための判断基準
法改正後の現在、新基準原付(125ccベース)と小型限定二輪(本格125cc原付二種)のどちらを選ぶべきか迷うユーザーに向けて、後悔しない明確な線引きを提示します。
【新基準原付(原付一種)を選ぶべき人】
- すでに普通自動車免許を保有しており、教習所に通う時間や追加の免許費用(数万〜10万円前後)を一切かけたくない人。
- 移動範囲が自宅から半径5km〜10km圏内の近隣移動、近所のスーパーへの買い物や駅までの通勤に限られている人。
- 片側3車線を超えるような大規模なバイパス道路や幹線道路を日常的に走る必要がない人。
【小型二輪免許を取得して本格原付二種を選ぶべき人】
- 片側2〜4車線の主要幹線道路を利用した中長距離(片道15km以上)の通勤・通学を想定している人。
- 二段階右折の待機リスクや、30km/h制限による後続車からの煽り運転・プレッシャーから精神的に解放されたい人。
- 夫婦や親子でのタンデム(2人乗り)移動を視野に入れている人。