タイトルにも掲げられた「僕の心をつくってよ」というフレーズは、初見のリスナーに強烈な違和感と切なさを同時に突きつけます。一般的なポップソングにおいて、心はすでに自前で持っているものであり、誰かに「作ってもらう」という受動的な表現は極めて異例だからです。しかし、ここにこそ平井堅がドラえもんの世界観から掬い上げた最大の心理的真実が横たわっています。
歌詞の中で描かれる語り手は、決して強靭なヒーローではありません。泣き虫で、頼りなくて、すぐに弱音を吐いてしまう。まさに野比のび太そのもののパブリックイメージを投影しながら、歌は次のように語りかけます。「君」という存在が隣にいて、自分の歪さや欠落を否定せずに受け止めてくれるからこそ、バラバラだった感情に輪郭が生まれ、人間らしい「心」が完成していく――。これは心理学における「自己対象(Self-object)」の機能、すなわち信頼できる他者との関わりの中で自己のまとまりを獲得していくプロセスそのものです。
平井堅は制作時のインタビューで、映画のプロットを熟読した上で「のび太とドラえもんの関係は、友情という言葉だけでは片付けられない、ある種の恋人以上の共犯関係や無償の愛に近い」という趣旨の発言を残しています。相手の存在なしには自分が自分でいられないという痛切な告白は、のび太からドラえもんへのメッセージであると同時に、ドラえもんという未来のロボットがのび太を通じて「本物の感情」を知る過程のメタファーとしても機能しています。