早朝のロケーション現場。冷気漂うスタジオで、アクション監督の指示が飛ぶ。難度の高いアクロバティックな動きを要求されるシーンだが、吹き替えのスタントマンは用意されていない。彼自身がすべての動線を身体に叩き込み、一発勝負のカメラテストに臨むからだ。
佐野岳の代名詞とも言える驚異的な身体能力。だが、取材現場で目撃したのは、単なる天性の才能ではない。徹底された自己管理と、撮影開始の何時間も前から入念に行われるストレッチ、そして殺陣の微調整だ。カットがかかった瞬間、肩で息を切りながらも「もう一回、角度を変えていきましょう」と自ら提案する。その執念が生み出す映像の迫力は、CG全盛の時代にあって力強い生々しさを放っている。スタッフの間で語り継がれる未公開のエピソードとして、危険なワイヤーアクション撮影時にも動じることなく、空中での完璧な姿勢制御を見せて周囲を唸らせたという逸話がある。本物が醸し出す説得力は、こうした泥臭い現場の裏側から生まれている。