絶食を終えたハブをそのままアルコールへ投入するわけではありません。現代の製造現場では、衛生管理と風味向上のため、極めて緻密なハブ酒内臓処理と臭み消しの手順が施されます。
第一の関門がハブ酒毒抜きの手順です。ハブの毒液は頭部の「毒腺」で作られ、中空の毒牙から獲物へ注入されます。プロの製法では、麻酔下にあるハブの毒牙の根元を圧迫して毒液を完全に搾り取るか、あるいは毒腺そのものを外科的に切除します。万が一毒が残存していたとしても、ハブ毒の本体はタンパク質(主に出血毒や神経毒)であるため、エタノールによるタンパク質変性と胃酸のペプシンによって容易に分解され、経口摂取しても人体に害はありません。しかし、製品としての安全性を極限まで高めるため、物理的な毒抜きが徹底されます。
第二の関門が、下腹部を数センチ切開して行われる内臓と脂肪の除去、そして血抜きです。蛇特有の生臭さの原因は、血液と内臓周辺の脂質にあります。これらを熟練のピンセット捌きで瞬時に摘出し、冷水と特殊な洗浄液で徹底的に洗い流します。
こうして下処理を完璧に施したハブを固定するのが、ハブ酒用泡盛のアルコール度数の高さです。通常、飲用される泡盛は25〜30度前後ですが、ハブの固定・殺菌にはアルコール度数59度前後の高濃度アルコールが用いられます。高浸透圧と強力な脱水作用によって、筋肉組織内の水分を一気にアルコールへと置換し、腐敗の隙を一切与えずに組織を硬化させるのです。