メガホンをとるのは、日本映画界が誇る鬼才・李相日監督だ。吉田修一の小説と李相日のタッグといえば、映画史に強い爪痕を残した『悪人』(2010年)や『怒り』(2016年)が記憶に新しい。人間の内面に潜む狂気や悲哀、そして救いようのない美しさを描き出してきたこの黄金コンビが、三度目のタッグとして選んだのが本作である。
監督は原作の持つ圧倒的な熱量を削ぐことなく、映像ならではのダイナミズムへと置換することに固執した。登場人物が背負う業(ごう)と、舞台上で放たれる一瞬の閃光。スクリーンの隅々にまで宿る緊迫感は、文芸映像化の新たなる到達点を予感させる。