咳が2週間以上続く危険性を軽視してはならない理由は、単なるアレルギー性疾患の枠にとどまりません。風邪に酷似した導入から始まり、後から特有の重篤な症状を呈する病原体が存在します。
その代表格がマイコプラズマ肺炎の兆候です。肺炎マイコプラズマによる気道感染症であり、発症初期は微熱や全身倦怠感、頭痛などの一般的な風邪症状で始まりますが、解熱後も激しい頑固な咳が数週間にわたって続きます。聴診器で胸の音を聞いても特有のラ音(雑音)が聴取されにくく、胸部X線検査を実施して初めて肺に淡い浸潤影が認められるケースが珍しくありません。若年層から働き盛りの世代まで幅広く感染がみられ、一般的なペニシリン系やセフェム系抗菌薬が無効であるため、適切なマクロライド系やキノロン系抗菌薬による治療が必要となります。
もうひとつ、見逃されやすいのが大人の百日咳の症状と特徴です。乳幼児の感染症というイメージが根強く残っていますが、小児期に接種したワクチンの抗体価は成人期(おおむね最終接種から10〜15年後)に激減します。成人が百日咳菌に感染した場合、乳児のような「息を吸い込むときの笛のような音(レプリーゼ)」は目立たず、熱は平熱であるにもかかわらず、会話や笑った拍子に嘔吐するほど激しく連続して咳き込むという特異な経過をたどります。周囲に風邪症状を長引かせている同僚や家族がいる環境では、成人百日咳の集団発生も視野に入れた血清抗体検査や遺伝子検査(PCR法)が求められます。