なぜ、ここまで厳しい法規制が敷かれるに至ったのでしょうか。その決定打となったのは、全国各地で相次いだ特定動物の管理不備と、それに伴う地域社会への深刻なパニックでした。
記憶に新しい象徴的な事案が、法改正施行直前の2020年春に静岡市で発生したサーバルキャットの脱走劇です。住宅街の飼育施設から体長約70cmのサーバルキャットが逃走し、警察や自治体職員が連日動員される大規模な捜索活動へと発展しました。周辺住民には外出自粛や厳重な警戒が呼びかけられ、保護されるまでの16日間にわたって地域社会は極度の緊張状態に包まれたのです。
報道関係者や動物行政担当者の間では、当時から「個人の手加減ひとつで住民の生命が脅かされる管理体制は限界に来ている」という懸念が強く指摘されていました。サーバルキャットは成獣になると体重8〜18kg、垂直跳びで3メートル以上跳躍する驚異的な身体能力を誇ります。爪や牙の鋭さはイエネコとは比較にならず、本気で攻撃されれば人間の頸動脈や神経を破壊しかねない潜在的危険性を持っています。
「どれほど愛情を注いでいても、野生動物の闘争本能を100%封じ込めることはできない」――行政が下したこの冷徹な判断こそが、特定動物の愛玩飼育を原則禁止へと舵を切らせた最大の根拠でした。