SNSやネット掲示板、動画配信サイトでは「ビクタースタジオの怖い話」が定期的にトレンド入りし、オカルトファンの間で定番ネタとして楽しまれています。しかし、実際の制作現場に携わるプロたちの受け止め方は、世間の恐怖感とはやや異なります。
音楽業界には昭和の時代から「心霊現象が起きるスタジオで録音された楽曲はヒットする」「幽霊が聴きに来るほど名曲である」という強力なポジティブ・ジンクスが存在します。レコーディングスタジオという空間は、アーティストやプロデューサーが莫大な予算とプレッシャーを背負い、精神を極限まで研ぎ澄ます現場です。
不可解なトラブルや偶然のノイズ混入を「不吉な呪い」ではなく「縁起の良い吉兆」として捉え直すことで、現場の緊張をほぐし士気を高める心理的防衛機制(リフレーミング)が働いていたと言えます。この業界特有のカルチャーが、噂を排除せずむしろ語り継ぐ土壌を作ったのです。