このホテルの本質を語る上で欠かせないのが、アルド・ロッシの建築と内田繁のデザインが起こした奇跡的な化学反応です。ロッシはイタリア・ミラノ出身で、1990年に建築界のノーベル賞とされるプリツカー賞を受賞した巨匠。彼が提唱した「都市の類推」を具現化した外観は、ペルシャ赤大理石の重厚な壁柱と青銅色の梁で構成され、通りに面した窓を一切持ちません。外界と隔絶された神殿のような佇まいは、35年以上を経た今も圧倒的な異彩を放っています。
一方で、内部空間の統括を手掛けたのが日本を代表するインテリアデザイナーの内田繁でした。開業当時、館内にはエットーレ・ソットサスやガエタノ・ペッシェ、倉俣史朗といった錚々たる鬼才たちが手掛けたバーが併設され、世界中のクリエイターが集う伝説のサロンとなっていました。今回の改装では、内田氏がデザインした伝説のバー「エル・ドラド」の黄金のファサードが、地下の巨大ラウンジ空間の象徴的意匠として見事に再構築されています。
西洋の合理主義と日本の引き算の美学が高度に融合したこの空間は、単なる宿泊施設という枠を超え、現代の福岡のデザインホテル群の中でも唯一無二のアートピースとして位置づけられています。