「タイへの入国手続きが激変する」という噂が急速に広まった契機は、タイ外務省および入国管理局が検討を進めていた「電子渡航認証(ETA: Electronic Travel Authorization)」の導入計画でした。欧米諸国が相次いで導入するESTAやETIASと同様、ビザ免除対象国の渡航者に対して渡航前のオンライン登録を義務付ける構想が報じられたことで、旅行者の間に「手続きが煩雑化し、手数料が発生するのではないか」という不安が広がったのです。
タイ国政府観光庁の公式発表および関係省庁の通達によると、2026年現在、一般的な観光目的で入国する日本人渡航者に対してETAの事前申請は義務付けられていません。観光業界からの「手続きの複雑化がインバウンド回復に冷や水を浴びせかねない」という強い懸念を受け、実務運用の開始時期は慎重に再調整されています。
さらに旅行者の関心を集めたのが「ビザ免除滞在期間」の取り扱いです。タイ政府は観光需要の喚起策として、日本を含む対象国に対して従来の30日間から「最長60日間」へのビザ免除滞在枠の拡大措置を打ち出しました。この規制緩和は2026年現在も適用されており、特別な査証を取得することなく、パスポートと往復の航空券を所持していれば、ゆとりを持った中長期滞在が可能です。ただし、入国管理官の判断により帰国用航空券の提示や十分な滞在資金(1人あたり2万バーツ以上相当)の確認を求められる事例は報告されており、手ぶら同然の入国がフリーパスで認められるわけではありません。
もう一つの火種であった「観光税(入国料)300バーツの徴収」についても、真相を把握しておく必要があります。この制度は、外国人観光客の国内インフラ利用負担や医療費未払い問題への対策として立案されたものですが、観光産業を国家経済の牽引役と位置付けるタイ政府内での議論が二転三転し、2026年の現時点でも徴収の開始には至っていません。タイ国政府観光庁東京事務所の窓口でも「現時点で旅行者が事前に支払うべき観光税は存在しない」と案内されています。