この二者を分かつ最も大きな要素は、その「生まれ故郷」にある。キーマカレー(Keema Curry)のルーツは本場のインド料理だ。ヒンディー語やウルドゥー語で「キーマ(Keema)」とは「細切り肉」や「ひき肉」を意味する。数千年の歴史を持つ南アジアの食文化の中で、余った肉や固い部位を細かく刻んでスパイスとともに炒め煮にしたのが始まりとされる。
対するドライカレーは、実は日本生まれの「日本風洋食」だ。その発祥は20世紀初頭、大正時代の海の上にまで遡る。当時の日本郵船が運航していた豪華客船「新田丸」の厨房で、船酔いに苦しむ客でも食欲をそそられるよう、ひき肉と野菜をスパイスで炒めてライスに載せた料理が考案された。これが日本におけるドライカレーの原点である。日本カレー協会会長の井上岳久氏も指摘するように、独自の工夫で海外の味覚をアレンジする日本の洋食文化が生んだ傑作なのだ。