日活ロマンポルノには、現場の映画監督たちに課せられた極めて厳格な共通縛りがありました。それが映画史で語り継がれる日活ポルノ製作ルールの制約です。現場に言い渡された条件は、主に以下の3点に集約されていました。
第一に「上映時間は約70分前後(60〜75分)」であること。第二に「10分に1回程度の割合で性描写(絡みのシーン)を入れること」。そして第三に「低予算と厳格な製作スケジュール(撮影日数は約1週間前後)を死守すること」でした。もちろん、当時の映倫(映画倫理機構)規定に基づき、性器の直接露出は厳禁でした。
一見すると作家性を奪う過酷な足枷に見えますが、真実は真逆でした。製作陣には「このルールさえ守れば、ストーリー、演出方法、テーマ設定、キャスティングは完全に監督の自由」という破格のフリーハンドが与えられていたのです。当時の助監督や若手演出家にとって、日活撮影所はまさに表現の「実験場」であり「虎の穴」と化しました。
純文学の翻案からアバンギャルドな前衛劇、痛烈な社会風刺、果てはヌーヴェルヴァーグを彷彿とさせる長回しまで、ありとあらゆる映像的実験が試みられました。制約という檻があったからこそ、それを乗り越えようとするクリエイターたちの熱量が飽和し、一般映画では不可能な先鋭的でみずみずしい傑作群が生み出されていったのです。