加納典明のキャリアは、戦後日本のサブカルチャーがアンダーグラウンドからメインストリームへと駆け上がる歴史そのものでした。1942年、愛知県名古屋市に生まれた彼は、日本大学芸術学部写真学科を中退後、スタジオアシスタントを経て20代で頭角を現します。雑誌『平凡パンチ』などのグラビアで、従来の清純派アイドル像を解体するようなアグレッシブな構図と肉体美を提示し、一躍「新世代の過激写真家」の筆頭に躍り出ました。
彼をお茶の間のモンスターへと押し上げた最大の要因は、ビートたけしをはじめとする鬼才たちとの邂逅です。テレビ東京の伝説的カルト番組『浅草橋ヤング洋品店(通称:アサヤン)』では、「中華大戦争」などの名物コーナーで浅草キッドや江頭2:50らと壮絶なプロレス的抗争を展開。怒りを露わにしながら暴れ回るパフォーマンスは、視聴者に強烈なトラウマと熱狂を植え付けました。
ビートたけしとは互いの才能を認め合う盟友関係にあり、映画『ソナチネ』や『TAKESHIS'』といった北野武監督作品にも関与・出演。暴力と死の匂いを纏った加納の独特の佇まいは、映画界でも唯一無二の異彩を放ちました。しかし、狂気に満ちたテレビ出演の伝説の裏で、加納は現場の照明位置からモデルの筋肉の陰影に至るまでミリ単位の計算を尽くす、求道的なカメラマンとしての誇りを片時も手放しませんでした。