時計の針を1977年に戻そう。ジェフ・リンはアルバム『Out of the Blue』の楽曲制作のため、スイスのアルプス山脈を見渡すシャレーに引きこもっていた。しかし、待っていたのは連日の暗い雨と重苦しい霧。2週間もの間、曲のアイデアは一切浮かばず、創作のインスピレーションは完全に枯渇しかけていたという。
事態が一変したのは15日目の朝だった。窓の外を覆っていた黒い雲が嘘のように去り、鮮やかな青空と輝く太陽がアルプスの山肌を照らし出したのだ。その瞬間に溢れ出た旋律こそが、のちに音楽史に刻まれるこの大傑作だった。リンは後年のインタビューで「太陽が顔を出した瞬間、突然すべてが動き出した。その日のうちに一気に曲を書き上げたんだ」と振り返っている。悪天候の鬱屈から一気に解放された人間の歓喜が、あの弾むようなリズムとメロディの根底に流れている。