「ワインの本当の表情は、温度が2度変わるだけで劇的に変化します」――そう語るのは、現地セラーの奥で案内してくれた熟練の醸造家だ。現地を訪れた者だけが巡り合える非公開テイスティングでは、ステンレスタンクから直に注がれる滓引き前の原酒や、一般流通しない単一畑の極小ロットキュヴェが振る舞われることがある。
プロが推奨するテイスティングの鉄則は明快だ。まず、注がれた直後の冷えた状態(約10℃)で立ち上る柑橘のクリスプなアロマを嗅ぎ、グラスを手で包み込みながらゆっくりと14℃付近まで温度を上げていく。このわずか数分の間に、甲州ブドウ特有の和柑橘のニュアンスから、白桃や熟したリンゴ、さらには心地よいミネラル感へと香りのグラデーションがダイナミックに開いていく。
さらに、ワイナリー直売所だけでひっそりとリリースされる「無濾過生詰め」のバックヴィンテージは、見つけたら迷わず手に入れるべき逸品。現地での試飲体験は、ラベルの文字を読むだけでは決して辿り着けない、造り手の生々しい息遣いそのものを伝えてくれる。