年賀状の準備を進める際、インターネット上で度々議論になるのが「ボールペンで宛名を書くのは失礼にあたるのか」というマナー問題と、「薄墨(うすずみ)」に関するタブーです。慣習の背景にある歴史的文脈と、現在のエチケット基準を整理します。
年賀状ボールペンマナー違反の真相を検証すると、昭和から平成初期にかけて形成された「ボールペン=事務作業用の道具」という価値観に端を発しています。「簡便な事務用具で年始の挨拶を済ませるのは敬意を欠く」「文字の線が細く、お祝いの品格に欠ける」という理由から、目上の方に対するボールペン書きはマナー違反とされてきました。
しかしながら、個人のコミュニケーション様式が大幅にデジタルへ移行した現在、マナーの捉え方は柔軟に変化しています。恩師や上司など極めて礼儀を重んじる相手への「宛名面」には毛筆や筆ペンを用いるのが無難である一方、親しい友人・同僚への宛名や、裏面の「一言添え書き」においてボールペンを用いることはマナー違反とみなされなくなっています。ただし、極細(0.38mmなど)のボールペンは線が貧弱に見え、お祝いの華やかさを損なうため、ボールペンを用いる場合は最低でも0.7mm以上、できれば1.0mmの太字ゲルインクを選び、堂々とした太さを確保するのが大人のマナーです。
一方で、現代においても一切の例外なく絶対に避けなければならないのが年賀状薄墨NGの理由です。市販の慶弔両用筆ペンには、片側に黒、反対側に薄墨(グレーのインク)が備わっている製品が多く出回っています。薄墨は本来、「突然の悲報に涙がこぼれ、墨が薄まってしまった」「急いで駆けつけたため、十分に墨を摺る時間がなかった」という哀悼の念を表現する弔事専用のインクです。新春の慶びを寿ぐ年賀状に薄墨を使用することは、受け取った側に不幸を連想させる重大な禁忌行為となります。黒と薄墨のツインタイプを使用する場合は、軸の印字を必ず指差し確認し、濃い漆黒側のみを使用してください。