人体の背部には、皮膚のすぐ下にある大きな筋肉から背骨の際(きわ)に細かく張り巡らされた筋肉まで、無数の筋線維が存在します。これらを解剖学的に整理する第一歩が、「浅背筋(せんはいきん)」と「深背筋(しんはいきん)」の層構造を把握することです。
浅背筋は、発生学的に「上肢(腕や肩甲骨)」を動かすために背中へと移動してきた筋肉群です。体幹の背面に位置しながらも、その主たる役割は肩甲帯および上腕骨の運動にあります。これに対して深背筋、とりわけ「固有背筋」と呼ばれるグループは、脊柱そのものを動かし、直立二足歩行を支えるために配置された筋肉群です。
背中を触ったときに手のひらで触知できるのは主に浅背筋ですが、姿勢の崩れや頑固な重だるさの引き金となっているのは、より奥深くに位置する深背筋であるケースが少なくありません。この二重構造の役割分担を理解することが、背部全体の機能を読み解く基礎となります。