ホームに降り立つと、甘辛い醤油と鶏肉の香ばしい匂いがふわりと鼻腔をくすぐる。折尾を象徴する風景といえば、大正時代から続く「東筑軒」の立ち売り「かしわめし」だ。全国的にも希少となった駅ホームでの手売りスタイルは、高架化が完了した美しいホームにおいても変わらず受け継がれている。
「折尾に帰ってきた実感が湧くよ」——出張帰りの会社員が笑みをこぼしながら買い求める光景は、ここがどんなに近代的な駅に生まれ変わろうとも変わらない伝統だ。特製の木枠に並べられた弁当箱、澄んだ声で響く「かしわめし〜」の売り声。それは単なる名物グルメの域を超え、この駅を行き交う人々の心の拠り所として生き続けている。