梶裕貴さんのキャリアを語る上で欠かせないのが、作品の屋台骨を背負う圧倒的な主人公キャラクターたちです。彼の声には、どれほど過酷な運命に直面しても前へ進もうとする泥臭さと、胸を打つ情熱が宿っています。
世界的な社会現象を巻き起こした『進撃の巨人』のエレン・イェーガーは、梶さんの声優人生を象徴する当たり役となりました。少年期の無鉄砲な怒りの叫びから、世界の真実を知り冷徹な覚悟を固めた青年期まで、10年以上にわたる内面と声質の変遷を見事に演じ切っています。アフレコ現場で実際に喉を傷めるほどの極限状態で絞り出された叫びは、国内外のアニメファンに強烈な衝撃を与えました。
また、『七つの大罪』の主人公メリオダスでは、普段の飄々としたコミカルな佇まいと、ひとたび仲間を傷つけられた際に見せる魔神族としての冷酷・圧倒的な強さのギャップを鮮やかに表現。軽妙なノリの裏にある数千年の業の深さを、巧みな声のトーンチェンジで体現しています。
さらに『マギ』のアリババ・サルージャや『ワールドトリガー』の三雲修など、等身大の葛藤を抱えながら泥臭く成長していくリーダー像にも定評があります。「挫折を知る主人公」を演じさせたら右に出る者はいないと言われる所以が、こうした名作群に凝縮されています。