宇津井健さんが息を引き取ったのは2014年3月14日。ホワイトデーの午後のことだった。命を奪った直接の病名は慢性心不全。心臓のポンプ機能が徐々に低下し、全身に必要な血液を送り出せなくなる病だ。
実は、彼が心臓の不調を感じ始めたのは亡くなる数年前からのことだった。しかし、体調不良を理由に仕事を断ることを極度に嫌った宇津井さんは、周囲のスタッフや共演者にも一切の病状を伏せていた。呼吸が苦しい時でもカメラが回れば完璧なセリフ回しを見せ、周囲を気遣う立ち振る舞いを崩さない。主治医の制止を振り切るようにして現場に立ち続けた姿は、まさに筋金入りの役者魂そのものだった。
最期は名古屋市内の病院で、親しい知人や家族に見守られながら静かに息を引き取った。最期の瞬間まで「もう一度カメラの前に立ちたい」と語っていたという。その執念と誇り高さこそが、彼の人生のシンボルだった。